がんなど
例えば、がんの痛みに伴う鍼治療は、欧米や日本の大学・医療研究機関で行われ、補完医療として痛みの軽減に有用であるとされているものの、他の整形疾患などに比べて、臨床のデータが極端に少ないため、明確なエビデンスによる納得には、もう少し時間を要する部門でもあります。
当院で行ったがんに対する鍼灸治療の経験からお話ししますと、がん(医療機関と併行して行いたいという方、または医療機関の治療をほぼ受けずに自己療法を行っている方がいらっしゃいます)の痛みや苦痛、それに伴う運動制限の軽減に対して、鍼の施術は個人的な差はあるものの、有効であると考えております。
しかしながら、御当人の状態如何によりましては、なかなか困難であるかと思われるケースもやはりあります。
ただ、鍼の施術自体によって、がんを治すということではなく、鍼の施術によって、まず気持ちよくなっていただくこと、加えて淀んだ血・気を巡らせ、少しでも元気を出していただくこと、このことが非常に有意義な一歩であると考えます。あくまで、身体を癒していくのはご自身の内在している治癒力であり、その治癒力を刺激し、促進するきっかけになるのが鍼灸と捉えております。
毎日、常に痛み・不快感があるという方でしたら、一週間のうち、「痛み」の軽い日が一日、または数時間でもできれば、ご自身の自信と気力の賦活につながります。このことがどれほど、痛みを認識する脳と、身体に大きな良い影響を及ぼすか、いうことは誰にもはかりしれません。実際に、施術を行っていますと、「人間の細胞の粘り強さや回復に対する喝欲」には驚嘆の意を捧げずにはいられません。
まずは、短時間からの痛みの軽減と、気力回復を第一歩として、自律神経系・内分泌系・免疫系の調整(※鍼灸の効果のページ参照)によって睡眠や食欲面の向上を図り、また適切な日常の食事や行動範囲を見直しながら、少しずつ、できる・楽しめる幅を広げていけるよう、無理のない施術を行います。
鍼灸の施術内容は、灸はご本人の体力の具合を診て、糸のような細さでほぼ熱さを感じないようにして行うか、または全く行いません。鍼に関しましても、一番細いやわらかい鍼で、刺入の深さもごくごく浅めに、最小の刺激で行うか、または状態により、刺さない手技である「接触(せっしょく)鍼(しん)※」で行います。ご安心ください。
※接触鍼…はりを身体にさすことなく、皮膚面にはり先を接触させ、軽い按圧を加えながら諸諸の気を動かすことにより、病・病人に対処する方法
また、がんに対しては、どんなに効果のある治療法よりも、ご自身の「正しい日常生活」が一番素晴らしい薬だと考えます。現在行われている生活スタイルや食事、健康療法などをなるべく詳しくお伝えください。今までの施術経験と、ご自身の体質の診断を踏まえてアドバイスさせていただきます。
また、このようなデリケートな症状は特に、心理的な生気の再起は、身体の治癒にとって最重要であり、施術(師)が信頼できること、これも施術効果に大切なことですから、少しでも不安に思ったことは何でもお伺いください。
以下は、当院の経験に基づく、がんなどの大きい症状に対する大まかな施術目標です。
- STEP-1
- 苦痛の軽減<<施術
- STEP-2
- 自信と気力の賦活
- STEP-3
- さらなる苦痛の軽減<<施術
- STEP-4
- 不眠や食欲の回復
- STEP-5
- 日常生活動作の向上<<施術
- STEP-6
- 回復と趣味など楽しみへの意欲